2017年12月23日土曜日

親子逆転もまた楽し!

T家宅 クリスマスゲーム会


京のボードゲーム会でいつもご一緒している、Tさんのお宅で開かれたプライベートゲーム会に参加。T家の皆さんと私、同じく京都でご一緒しているOさん親子、そしてT家のお子さんのお友達…等、出入りを交えながら、5人~7人で色々なゲームを楽しんだ。

 ボードゲームで遊ぶことがほとんどだったが、トランプゲームもいくつかやったので、少し紹介。まず、今年色々な場所に持ち込んでプレイした、4人用ゲームのシャーフコップの5人バージョンである【シープスヘッド】を。ドイツで200年以上前から遊ばれているシャーフコップを、ドイツ移民がアメリカに持ち込んで変化させたのがシープスヘッドだ。基本的なルールは同じなのだが、5人の場合は2対3で戦うゲームになり、それに併せてルールも少し変えられ、2対2より緊張感のあるバランスのゲームになっていて、とても面白い。

 QとJ全てが切札という変則ゲームなので、今回も分かりやすいように切札に赤いシールを貼ったものを持参。しかしT家ではよくトランプのナポレオンが遊ばれているせいか、すんなりとルールを理解してくれた。それどころか、最初のラウンドから娘さんが「お父ちゃん、私ら連合軍やから得点札つけてよ」とか、息子さんが「さっきの場面では、高目の切り札を出すべきやった」等と、すぐに戦略を理解してプレイしていたので驚いた。さすがゲーマー家族、恐るべしだ。
 ゲーム中はとても真剣だが、ゲームの合間には冗談を言って笑いあったり、世間話で盛り上がり、家族の仲の良さを肌で感じることができた。そんな家族と一緒にゲームをしていると何をやっても楽しく感じる


 もう一つプレイしたトランプゲームは【スニーク】。Oさんが加わり6人でプレイ。スニークは私自身もまだ2度目のプレイなので、どうすれば良いのか手探りだったのだが、皆でわいわい言いながらプレイしていくうちに「あ、ここは『どうどう』で勝負した方が得や」とか「これやったら『こそこそ』でみんなを誘い出して大量得点や」等とゲームの戦略が分かってきて面白くなってくる。
 そして京都のゲーム会でもそうだが、こういうゲームはOさんがなぜか強い。ストレートで私が4-5と出せば、Oさんは5-6、ペアではあまり手札が溜まっていないのにK-Kで大量得点したりとか。もうほんまにかないまへん。2ディールやってOさんがダントツの勝利で幕。


 トランプ以外で、複数回遊んだのがSpot it!ドブル)。ご近所の娘さんの友人と遊んだり、お昼ご飯までの少しの時間にやったりと大活躍。私はどこにでも持って行くのだが、小さい子でもゲームの経験が少ない人でもすぐに理解できるルールで、人数も選ばず楽しめる良いゲームだ。


 また、今日のゲーム会で一番盛り上がったのはマジックメイズだったと思う。全員で分業してコマを動かす協力型ゲームで、子供世代(20才前後)3人とその親世代4人の合計7人でプレイした。反射神経が問われるゲームなので、指示を出すのは子供世代で、親達は「はいはい」とそれに従って動かそうと思うのだが、ミスが多くて笑いが絶えない。いつの間にか親子の立場が逆転していることに気づかされる良い(?)ゲームだと思った。


 それ以外に、魔法にかかったみたい、うみがめのスープ、ゲシェンク、クラウド9、お邪魔者、コードネームをプレイ。コードネームではなぜか「ブーメランパンツ」というキーワードで盛り上がってしまった。
 私にとっては今年最後のゲーム会。Tさんありがとう。また来年もよろしく!



2017年12月11日月曜日

Sneak(スニーク) パーレット作ブラフゲーム

「こそこそ」それとも「どうどう(堂々)」?

ポーカーのような手役で勝敗を争うゲーム。
「こそこそ」とカードを裏向きで勝負するか、「どうどう」と表向きで勝負するか?



 12月10日のトランプ会でプレイして面白かったので、紹介を兼ねてルールの訳を公開します。日本語での紹介は、インターネット上では初めてだと思います。訳の間違い等があればご指摘をお願いします。SNEAK(英語原文)

**更新履歴**************************
2017/12/11 公開
2017/12/20 「こそこそ」時の役なし複数札の扱いについての解釈変更
2017/12/20 チャレンジに負けた側の手札の扱いについての解釈変更
※上記2点の解釈について、パーレット作品にお詳しい黒宮公彦さんにアドバイスを頂きました。ありがとうございました。
2017/12/25 手札制限の枚数について追記
***********************************

※ここからルールの抄訳(ゲームをするのに必要と思うところのみ記述)。
 原文のSneakを「こそこそ」、Flauntを「どうどう」とする。

●2~7人用ゲーム

●カード
 2、3人の場合は52枚のトランプ1セット。
(強さの順は通常のA>K>Q>J……4>3>2)
 5人以上はトランプ2セット(104枚)
 4人の時は1セットか2セットお好みで。

●ディール
 ゲームの開始時に各プレイヤーに手札はない。ディーラーが良くシャッフルして、誰もが手の届く場所に裏向きに1つの山札として重ねて置く。

●プレイ
 ディーラの左隣から手番を始める。時計回りに進行する。
 手番にできることは次の3つの内の1つ。
1.山札の1番上から1枚引き、手札にする。1巡目にできることはこれだけ。
2.1枚以上を手札から裏向きに出す。これを「こそこそ」と呼ぶ。もし誰もチャレンジしなければ、勝ち。それらのカードを表向きにせずそのまま自分の得点の山札に置く。
3.1枚以上を手札から表向きに出す。これを「どうどう」と呼ぶ。もし誰もチャレンジしなければ、それらを自分の得点の山札に置く。
(チャレンジがあった場合は別記)

 注意:「こそこそ」でも「どうどう」でも、自分以外で最も多い手札を持っているプレイヤーの手札より多い数のカードを出すことはできない。例えば、自分以外誰一人として3枚以上の手札を持っていない場合に、3枚のカードを出すことはできない。
筆者注:3人プレイの場合、Aが4枚、Bが2枚、Cが5枚持っている場合、CはAの持っている4枚でのリードはできるが、5枚はできないということ。これ以降、手番で手札を出すことを「リード」と呼ぶ)

●カードの組合せ(コンボ)
 2枚以上のカードの組合せを「コンボ」と呼ぶ。同じランク、スート、連番等がある。コンボは同じカード枚数で争われる。
 ここから強い順番に記述する。
マッチ:2枚以上の同ランク(例;4-4、J-J-J、等)
ストレートフラッシュ:2枚以上で同スートの連番(Aは14としても1としても使える。A-K-Q..でもA-2-3..でも使える)
ストレート:2枚以上の連番で、同スートではないもの。(Aは上と同様に使える)
フラッシュ:2枚以上の同スートで、連番ではないもの

●「こそこそ」チャレンジ
 もし「こそこそ」(カードを伏せて)でリードされた場合、同じカード枚数を裏向きに出してチャレンジすることができる。チャレンジする人が出そろったら、リードプレイヤーから順番にカードをめくる。
・リードが1枚の場合はスートに関係なく、ランクの高いカードが勝つ。
・リードが複数の場合は、上記のコンボの強いものが勝つ。同じタイプのコンボの中ではランクの高さを上から1枚ずつ比べて勝負する。
筆者注:マッチとフラッシュなら、無条件でマッチの勝ち。どちらもフラッシュの場合、K-10-2とK-9-8を比べると2番目の10と9を比べるので10が勝つ。合計数で比べるのではない)

 どちらの場合でも、引き分けになったときは手番順の後のプレイヤーの勝ち。

筆者注役のない複数札(上記のコンボになっていない複数の札・いわゆる「ブタ」)の場合はどうするのか、英文でははっきり触れられていない。しかし禁止としていないので、役のない複数札を一種のコンボとみなし、ランクの高さを上から1枚ずつ比べて勝負すると解釈する。もちろんフラッシュ以上のコンボには無条件で負ける。)

●「どうどう」チャレンジ
 「どうどう」(カードを表向き)でリードされた場合、同じ枚数を表向きに出してチャレンジする。2人以上のチャレンジャーがいる場合は、同時にカードを表向きに出す。
・リードが1枚の場合は同スートで、ランクの高いカードが勝つ。
・リードが複数の場合は、リードと同じコンボの中で強さを比べる。

 注意:例えば、ストレートフラッシュがリードされた場合、よりランクの高いストレートフラッシュでしかチャレンジできない。(筆者注:リードされた別スートでも勝負できる)
 しかし、もしストレートかフラッシュがリードされた場合、それぞれストレートかフラッシュとしての価値しか認められない。つまりストレートフラッシュということには価値がない。(筆者注:K-10-2のフラッシュがリードされた場合、J-10-9のストレートフラッシュでは負けるということ)

 引き分けの場合は、上記と同じく手番順が後のプレイヤーが勝つ。

「こそこそ」「どうどう」どちらでも、勝者はその場に出されたカードの全てを自分の得点の山札に入れる
筆者注:英文ルールでは、勝った場合に獲得できるカードについて明記されていない。前回プレイした時は、負けたプレイヤーの札は捨て札にしたが、勝者が獲得する方が正しいのではという指摘を受けた。私もそちらの方が自然だし、テンポアップにつながるので良いと思い、上記の通りとした。)

●プレイの順番
 どのプレイヤーが勝っても、手番順は常に変わらず時計回りに移動する。勝者に手番が移るのではない。

●ゲームの終了
 山札の最後の一枚が引かれたら、そこからは常に「どうどう」でのリードでプレイが行なわれる。(筆者注:リードプレイヤーはパスできない)
 最後に1人だけ手札が残った場合は、その残った手札を自分の得点の山札に入れる。
 各プレイヤーの山札1枚につき、1点。それを記録する。
 ディーラーが左隣に移り、全てのカードをシャッフルし山札を作り、最初に戻る。

●終了条件
 トランプ1セットの時は100点、2セットの時は200点でゲーム終了。


とても面白いゲームでしたが、ちょっと問題点が。
 4ディールだけプレイした感想ですが、リードでカードを出して勝負するときは、山札から引けなく手札が増えないので、少し損をする感じがした。つまり勝負せずに、手札を増やし続ける方が強いのでは、という印象。実際には手札を残せば勝てるというゲームではないが、ゲームが膠着しがちになり面白さが半減する。
 そこで、手札枚数の制限を7枚としたが、バランスが良くなった気がする。手札枚数を制限するルールはオリジナルにはない。しかしチャレンジが多い方が面白いので、積極的にチャレンジするようにルールをアレンジした方が良いのではと思っている。
(追記)12/23に6人でやってみたところ、手札枚数の制限は5枚でも丁度良い感じだった。


 これを読んでプレイした方は、ご感想をいただければ嬉しくと思います。またゲームバランスを調整するための工夫があれば教えてください。ツイッターでも、このコメント欄でもかまいません。よろしくお願いします。

2017年12月10日日曜日

第5回賽翁会 インスタ映えを目指して

 5回目の賽翁会。前回は飛行機トラブルで帰国できずに不参加だった、とりっくまさんのリクエストで、いつもより短めの間隔(3週間)で開催。参加はとりっくまさん、ンヌさん、ンヌjr君と私の4人。
 最初はとりっくまさんが持ち込んだ【ウィッチズ(witches)】を。ウィッチズは当トランプ会でもお馴染みのハーツのリメイク版。52枚のトランプに8枚の特殊カードを加え、絵柄をファンタジー風にしたもの。Amigoのウィザードの姉妹品で、雰囲気も良く似ている。



 ルールはオリジナルのハーツに、失点が倍になる」「失点を軽減する」「スペードの失点を無効にする」「いつでも出せて最も弱い」等の効果を持つカードが8枚が加わっている特殊カードが増えた分、広く気配りをしなければならない。例えば「失点を軽減する」等の「得になるカード」は取っておくべきなのだが、最初はそこまで気が回らない。しかしンヌjr君は最初から、そのようなカードをしっかり取っていく。ルールの呑み込みが早い。
 それに引き替え、大人3人はうっかりと普通のハーツのようにプレイしていたので、「大人やねんから、もっと慎重に」とンヌjr君から突っ込まれることも。練習を2ディール、その後本番で4ディールをプレイ。3ディール目にとりっくまさんが全ての失点カードを取り、それによって他全員にマイナス点を押しつける「シュート・ザ・ムーン」を達成し、一気に勝利した。
(結果/とりっくま:-10 ンヌ:-33 自転車人:ー41 ンヌjr:ー58)

 賽翁会では、ゲームの合間のスイーツタイムも楽しみの1つ。今回はアンパン、シュークリーム、ドーナッツとなかなか贅沢なラインアップ。またそれらを食べる前には必ず、写真に撮り、「きゃー、おしゃれー」とかまるで「女子会」のような盛り上がり。エエおっさんが集まって、何してんねん? まあ、ほんまの「女子会」がどんなんかは知らんけどね。



 スイーツの後は【Sneak(スニーク)】を。スニークパーレット作のブラフゲームポーカーのように手役を比べるゲームだが、枚数を自由に決められたり、裏向きか表向きによって勝負方法が変わったり、とバラエティに富んだゲーム。実は、前日にパーレットのサイトを見て、「これは面白そう」と急遽、和訳を手書きして持ち込んだもので、もちろん全員初プレイ。
 しかし実際にプレイしてみると、ルールに明記されていない部分で疑問点が出てきたり、ゲームバランスが良くないと思われる点があって、その度に「ここはパスできない方が良い」とか「手札の枚数制限をした方が良い」等の意見が出てきて、さながら創作ゲームのテストプレイのようになってきた
 結局3ゲームのテストプレイをやり、続いて本番で3ゲームをプレイ。前半にやったバランス調整もあり、ゲームはとても面白く、盛り上がる。どちらかと言えば、私とンヌさんがこういうゲームでは熱くなり、どんどん勝負をする。ンヌjr君ととりっくまさんは慎重プレイだ。
 それでも、全員参加しての勝負もあり、白熱したゲームになった。例えば下写真だと、フラッシュよりペアの方が強く、ペアの中ではAAが最強なので、AAが勝っている。勝者はンヌjr君だ。



 テストプレイ時には、圧倒的に強かったンヌjr君をおさえて、とりっくまさんが粘り勝ち。私はちょこちょこと勝負をしすぎて最下位に。ここでも「慎重」がカギだったのかも。
 ゲームも面白かったが、「試行錯誤」しながらプレイするのも楽しかった。こういう時間が作れるのも、気心が知れたこのメンバーならではだと思った。
(結果/とりっくま:20 ンヌjr:16 ンヌ:14 自転車人:11) 

 最後はミニミゼールを。リンク先に詳しく書いたが、このゲームは何度かルールが変更されていて、今回は新・旧両方のルールでプレイすることに。そしてロット宣言のタイミングを新ルールで行うのも初めて。とはいえ、もう何度かプレイしてきたので、少しのルール変更による戸惑いはなく、すんなり遊ぶことができたように思う。



 私達の会では、ロット宣言(全トリックを取る宣言)を何人かが挑戦しているものの、これまで成功者はいない。そこで「ロット宣言の、最初の成功者になりたい」という気持ちを全員が持っている。今日も新旧合せて10ディールやったのだが、なんとそのうち半分がロット宣言という多さ。そして全員失敗という…。みんなもっと慎重になろう!
 それから、24枚と28枚の違いはそんなに大きく感じなかったが、28枚の方がトリック数が1つ多いために得点バリエーションが増える。そして、それによって取れる戦略が増えるので、28枚の方が良いのではないかという声が上がっていた。
(結果・24枚ルール/ンヌ:30 自転車人:25 とりっくま:24 ンヌjr:16)
(結果・28枚ルール/とりっくま:36 自転車人:31 ンヌjr:30 ンヌ:21)


 また、いつも同じトランプじゃインスタ映えしないということで、今日は多くの種類のトランプで遊んだ。マクドナルドの景品トランプやA5サイズの巨大トランプ、バイスクルのマルチカラー等、そして今回遊んだ全てのトランプがンヌさんの所有物だった。ついでにカードスタンドもンヌさんの手作り。ンヌさんに感謝!

 こんな感じで、第5回賽翁会も無事終了。12月後半はみんな忙しいということで、ちょっと早いが「みなさん良いお年を!」で別れた。来年もトランプを楽しみましょう!

2017年12月8日金曜日

あと出しロット宣言? ミニミゼール最新ルール紹介

(この文章はTrick-taking games Advent Calendar 2017の8日目の記事です) 
 文末にミニミゼールの新・旧ルール両方をまとめた、印刷用のサマリー(PDF)を用意しています。以下の本文と併せてお読み下さい。

♣ミニミゼールってどんなゲーム?

 ミニミゼールは、99(ナインティ―・ナイン)で有名なデビッド・パーレット作の、トランプ用トリックテイキングゲームだ。使用カード枚数は少なく、ルールも簡単。1ゲームを20分ほどの短時間で楽しめる、正にミニゲーム。
 勝ったトリック数に応じた配点があり、安全なのは全部負けることだが、1回だけ負けると高得点しかし全部勝ってしまうと0点になる一方、全部勝つと高得点になる「ロット」という宣言もある。手札の強弱にかかわらず、それなりに戦え、最後まで勝負の行方がわからないスリリングなゲームだ。

♣複数のルールがある?

 今年6月からスタートした「トランプを楽しむ会」で、初心者でも手軽に楽しめるゲームを探していたところ、「ザ・トランプゲーム」(1994年・草場純著・成美堂出版)という本で、ミニミゼールを見つけた。切札はなく、カード枚数が少ないので、トリテ入門にぴったりだと思った。
 さっそく7月の会でやってみようと思い、得点の早見表を作ることにした。ルールの再確認を兼ね、作者の英語サイト【Original card games】を覗いてみた。すると、基本的なルールは同じだが、使用カード枚数、点数等が違っていた。疑問に思い、ネットで調べてみると、やはり和訳と英語のルールが違っていることを指摘する人がいて、「誤訳?」「草場さんのアレンジ?」等といった推測の声も上がっていた。
 また【カードゲームルール集】というサイトで日本語ルールを発見。こちらは「ザ・トランプゲーム」と同内容のルールだった。ネット上で日本語ルールを掲載していたのはここだけだった。(注:当ブログ執筆現在は、【ゲームばっかりやってないで】に掲載がある)

 ルールの違いが気になったので、直接、草場純さんに使用カード枚数等の違いを質問したところ、以下の回答を頂いた。(※注:「この本」は「ザ・トランプゲーム」のこと)
 この本は1994年12月10日に上梓されました。もう23年も前になるのですね。今調べてみたらその通り、28枚のルールが書いてあります。そのまた元は1989年10月7日付けの赤桐さんのプリントです。28年前! ということで、少なくとも28年前の時点ではパーラットは28枚のルールを書いていたのでしょう。パーラットはよくこのようにルールを変えます。(私は24枚ルールを今初めて知りました。5人のときは25枚でやりますが。)

 そして、1989年の「赤桐氏訳のルール」と、なかよし村で(日本で)初めてミニミゼールがプレイされた様子が記録された同年12月の「寄合覚書」を送って下さった。どちらも貴重なもので、「寄合覚書」には当時の臨場感があふれていて、とても興味深かった。(下写真)
   1989年当時のパーレットの英文を確認することができないので、断定することはできないが、赤桐氏がカード枚数のような初歩的な部分を間違えるとは思えないので、「誤訳」である可能性は少ないと思う。また「アレンジ」でないこともはっきりしたので、草場さんが推測したように、パーレット自身によるルール改訂が行われ、ルールの違いが生まれたのだと思う。代表作である99は何度もルールが改訂されているので、これも同様なのだろう。

 誤訳等ではないことが分かったところで、次項から、新ルール(現在の作者サイト・英語ルール)と旧ルール(1989年の赤桐裕二氏訳・日本語ルール)を比較しながら、ミニミゼールのルールを説明する。新ルールの和訳は私が行った(これが一番当てにならないかも^^;)が、直訳では分かりづらかったり、説明不足だと思われるところには、私が加筆した。そうした部分等に ・ちょっと解説・ を加えている。尚、作者サイトでは3人用・6人用のルールも掲載されているが、今回は旧ルールと比較できる4人・5人用のみの説明とする。

♣新ルールの「ロット宣言」に注目!

 ミニミゼールのルールはシンプルだ。トリックテイキングの基本ルールを知っている人に対してなら、点数早見表(下写真・文末にPDFデータあり)を渡して、「切札なし、マストフォローのゲームです。ランクはAが最強で、それ以外は数字通りですが、2はリードに使われると最強です。取ったトリック数に応じて、各プレイヤーは手元の表の通りの点数を得ます。また、全トリックを勝つつもりなら、「ロット」を最初に宣言でき、表とは別の点が入ります。では、始めましょう」と、ほぼ1分程度のルール説明でゲームを始めることができる
   しかし、新・旧ルールの違い、人数による違いが少なからずあるので、ここから具体的にそれらを説明する。
 まず、私が一番重要な違いだと考える、ロット宣言を取り上げる。ロット宣言とは4人用・5人用共通で、ゲーム開始時に「全部のトリックに勝つ」と宣言することだ。その宣言のタイミングが新ルールと旧ルールでは異なっている

・ロット宣言(新)
 各プレイヤーは、最初のトリックのカードを出す時に「ロット」を宣言できる。
 宣言者が全部のトリックに勝てば成功。そうでなければ失敗。成功の場合は宣言者が、失敗の場合はその他のプレイヤーが別記の点数を得る。ロットが宣言された場合、これ以外で得点することはない。
(※人数等によって点数が違うので、それぞれ記述する)

・ロット宣言(旧) 
 プレイヤーは、最初のトリックのリードが行われる前に「ロット」を宣言できる
 複数のプレイヤーがロットの宣言を希望した場合、ディーラーの左に近い人が優先される。宣言者が全部のトリックに勝てば成功。そうでなければ失敗。成功の場合は宣言者が、失敗の場合はその他のプレイヤーが後述の点数を得る。ロットが宣言された場合、これ以外で得点することはない。

ちょっと解説1・
 旧ルールのロット宣言は、通常のトランプゲームのビッドのように、最初のトリックのリードが行われる前に宣言が可能だ。しかし新ルールでは、最初のトリックで自分がカードを出すときに宣言する。これにより、リードプレイヤー以外は、他のプレイヤーの出したカードを確認して宣言することができる。いわば、あと出し方式に変更されている。
 該当の英文は下記の通りだ。
 If you think you can win all five tricks you can bid "The Lot" upon playing to the first trick.
 upon ~ingは、~しながら、~するときに直ちにと訳せるので、直訳すると「もし5トリック全てを勝てると思うなら、最初のトリックをプレイしながら、ロットをビッドすることができる」となる。
 また、「宣言できるのは1人だけ」という英文はないのだが、実際には手番順に行われるために1人だけしか宣言できないので、旧ルールに対応するように追記した。
 旧ルールとの比較で最初は「1人だけ」を追記していたのだが、原文に人数の制限がないので、「1人だけ」を削除した。実際に複数が宣言することは考えにくいが、原文で禁止していないことを、わざわざ禁止することはないのではないかと考えたからだ。従って、複数の宣言も可能となる。失敗の場合の点数は必ず0と解釈する。

ちょっと解説2・
 私たちの会では、数回ミニミゼールを遊んでいるが、このルールに気付いたのはつい先日だ。前回遊んだ時に、「ロット宣言」が何度もトライされたが、全部失敗だった。それはそれで面白いのだが、「なんかルールがおかしいんちゃう?」と疑問を持ち、ルールを読み返して、上の英文を見つけた。
 旧ルールでは、最初のトリックのリードプレイヤーでなければ、ロット宣言を成功させることは難しい。なぜなら「2はリードに使うと最強」というルールにより、リードプレイヤーはAか2をリードすれば必ず勝つからだ。Aと2は24枚中8枚、つまり3枚に1枚の割合で入っているので、リード以外の宣言成功は難しい。しかし、新ルールでは自分の手番までロット宣言を隠しておけるので、1トリック目でロット宣言が失敗する確率が下がると予想される。

ちょっと解説3・
 ところで、こんなビッド形式のトランプゲームは他にあるのだろうか? トランプ以外では「ティチュー」というカードゲームで、同じ形式のビッド(小ティチュー宣言)があるが、他にこのようなビッドを行うゲームを私は知らない。こういうユニークさがパーレットの持ち味なんだろう。あっぱれパーレット!と言いたい。

 続いて、ロット宣言以外のルールについて説明する。重複を避けるため、プレイ方法等の共通部分の記述は1度のみとする。
4人ゲーム(新ルール)
使用カード… 24枚 各スートの A、K、Q、J、10、2
カードの強さ… A>K>Q>J>10>2 2をリードに使うと最強
・プレイ
 適当な方法でディーラーを決め、各プレイヤーに1枚ずつ、全てのカードを配る。
 以降、ディール毎にディーラーは左隣に移る。
 ディーラーの左隣が最初のトリックのリードを行う。
 時計回りで、順に、リードされたスートのカードを持っていれば、その中からカードを出す。
 持っていなければ、他のスートのカードを出す。
 リードされたスートで1番強いカードを出したプレイヤーが勝ち、次のリードを行う。
 また、このゲームに切り札はない
得点 ロット宣言成功は、宣言者に12点、失敗は他プレイヤーに各6点
    ロット宣言がなければ、取ったトリック数に応じて下記の得点がつく
 トリック数   0   1   2   3   4   5   6 
  点 数    6   1   2   3   8   10   0 
終了 誰かが25点に達したら1ゲームが終了する。
    最高点が同じならば決着がつくまでディールを続ける。

ちょっと解説4・
 英文ルールでは、使用カードにジョーカーを加え、25枚の表記になっている。しかし25枚の場合、配りきったあとに1枚のカードが残るが、それに関する記述はない。実は今回取り上げている2つのルールとは別のバージョンがあり、そこでジョーカーが使われていた。しかし最新ルールにサイトを更新する際に、そのジョーカーのルールを無くしたのにもかかわらず、使用カードでのジョーカーの表記を削除するのを忘れたのではないかと推測している。そのため、使用カードのジョーカーを除き、上記の24枚とした。

4人ゲーム(旧ルール)
使用カード… 28枚 各スートの A、K、Q、J、10、9、2
カードの強さ… A>K>Q>J>10>9>2 2をリードに使うと最強。
・プレイ(省略)
得点 ロット宣言成功は、宣言者に14点、失敗は他プレイヤーに各7点
    ロット宣言がなければ、取ったトリック数に応じて下記の得点がつく
 トリック数   0   1   2   3   4   5   6   7 
  点 数    7   1   2   3   8   10   12   0 
終了 31点

ちょっと解説5・
 4人ゲームは新・旧で使用カード枚数が違う。旧ルールの方が4枚多い。それに伴い、得点も違う。私は28枚でプレイしたことはないが、このルールでプレイしてきた草場さんは、28枚の方が面白いのでは、とコメント下さった。4枚の違いではあるが、選択肢が多い方がゲームに深みが出る、というのがその理由だ。ロット宣言の成功率も下がると思うので、やや上級者向けのゲームになるかもしれない。

5人ゲーム(新ルール)
使用カード… 25枚 各スートの A、K、Q、J、10、2ジョーカー
カードの強さ… A>K>Q>J>10>2 2をリードに使うと最強
・プレイ(省略)
・ジョーカー
 リードに使うと必ずトリックに勝つ他のプレイヤーはどのカードでも出すことができる
 リード以外では、リードされたスートのカードを持っていなれば出すことができ必ずトリックに負ける
得点 ロット宣言成功は、宣言者に10点、失敗は他プレイヤーに各5点
    ロット宣言がなければ、取ったトリック数に応じて下記の得点がつく
 トリック数   0   1   2   3   4   5 
  点 数    5   1   2   6   8   0 
終了 25点

5人ゲーム(旧ルール)
使用カード… 25枚 各スートの A、K、Q、J、10、9ジョーカー
カードの強さ… A>K>Q>J>10>9 9は常に最弱(特殊効果を持たない)
・プレイ(省略)
・ジョーカー
 リードに使うと必ずトリックに勝つリード時にどのスートをフォローすべきかを告げる
 リード以外では、どのスートがリードされた時でも出せ必ずトリックに負ける
得点 ロット宣言成功は、宣言者に10点、失敗は他プレイヤーに各5点
    ロット宣言がなければ、取ったトリック数に応じて下記の得点がつく
 トリック数   0   1   2   3   4   5 
  点 数    5   1   2   6   8   0 
終了 25点

ちょっと解説6・
 5人ゲームでは、2つの点で新・旧ルールが異なる。1つ目は4人用でも採用されている、「2をリードに使うと最強」というルールが旧版にはないという点。2の代わりに9が使われるが、9は常に最弱のカードだ。
 2つ目はジョーカーのルールが異なる点だ。ルールの違いは上記の通りだが、旧ルールでは2が使われない分、ジョーカーの効果がやや強い印象を受ける。
 私は5人用を遊んだことがないので評価できないが、草場さんは「5人で面白いトリテとして貴重」だとおっしゃっているし、作者のパーレット自身も5人がベストだと考えているようなので、ぜひ5人ゲームも遊んでみたい。

♣どちらのルールも試してみたい

 ここまで、人数別、新・旧別にルールを説明してきた。両方を挙げることで、読者の方を少し混乱させたかもしれない。しかし、文末にある「サマリー」を印刷して本文を読んでらえれば、スムーズに理解できると思う。併せて、各プレイヤーのための「得点早見表」を人数、新・旧別に4種類用意しているので、プレイの際に活用して欲しい。

 次に、どちらのルールで遊んだ方が良いかについて、私の見解を述べる。まだ比較できるほどプレイできていなので、説得力はないかもしれないが、初めてプレイする方は、4・5人にかかわらず、作者が現時点でベストと考えている、新ルールで良いと思う。特にロット宣言は新ルールの方が成功率が上がると思うのでお勧めだ。そして慣れてくれば、旧ルールでプレイしてみてはいかがだろうか?旧ルールの方がカード枚数が多かったり、特殊カードが減ることにより「運要素」が少し減って、やや上級者向けだと思う。また場合によっては、旧ルールのロット宣言を取り入れるのも面白いかもしれない。

 今回、新・旧両方のルールを紹介したのは、記事を書く際にアドバイスを下さった草場さんから「ゲームは本質的にはプレーヤーのものなので、遊ぶ人が一番面白いと感じるルールで遊んでもらうのが最善です」という言葉をもらったからだ。1ゲーム20分で終わるゲームなので、気軽に、色々試して遊んでみてはいかがだろうか。当ブログでも、ミニミゼールのプレイ記を載せていくつもりなので、時々覗いて頂きたい。
 最後に一言
ミニミゼール、めっちゃオモロイから、やってみてミゼール! 

 ルールの間違いや記述ミスなどがありましたら、遠慮なくご指摘下さい。速やかに訂正します。質問も受け付けます。また、プレイ記などを寄せていただければ幸いです。

※以下が印刷用ファイルのリンクです。
 使用に制限はありませんが、間違いがあるかもしませんので、再配布はご遠慮下さい。
 下の写真はサンプルですので、PDFファイルをダウンロードして印刷して下さい。
印刷用ミニミゼール新旧ルールサマリー(PDF・A4)(写真上)
※得点早見表は切り取ると、トランプのブリッジサイズになります。(写真下)

※追記
 当ブログにもリンクがある「杜の家アーカイブ」の別府さいさんが素敵な説明図を作られましたので、こちらも参考にしてください。【ミニミゼール・カラー説明図